Saitama Grand Hotel Fukaya / 埼玉グランドホテル深谷

hotel / 2024

埼玉グランドホテル本庄と対をなすプロジェクトである。80年代のいわゆるバブルの時代に建てられたホテルのリノベーションのデザイン監修と家具設計を行った。既存の建物の仕上げは、石が貼られ、シャンデリアが吊られ、金色のメッキがされた派手な天井など、80年代という時代背景を反映した設えをしていた。それらは、単体では個性のある手間をかけたものだが、全てが同時に現れると互いの魅力を打ち消しあっていると感じた。なのでそれらを整えることで、魅力ある個性を引き出すことにした。
 
基本的な内装仕上げは石も金属も磨かれている。それらピカピカに磨かれたアイテム同士が喧嘩してる状態を調和するように、床から2100mm以上の壁と天井を艶なしの吹き付け仕上げとした。ピカピカを引き立てるザラザラ。こうすることで、2つの質が調和した心地よい空間の背景が出来上がった。古いモノと新たに加えられるモノとの関係が、互いに魅力的に引き立て合うように、家具や仕上げを決定して行った。具体的には以下の3点を意識した。

1: 土地の記憶を参照した素材の扱い
深谷はかつて著名なレンガの生産地であった。また周辺に有名な桜並木があり、これらの2つを参照した桜色のレンガタイルをホテルの象徴的なカウンターやテーブル脚に設けている。

2: 華やかさと遊び心のある空間
ホテルに隣接してブライダル利用のチャペルがある。そのためブライダル利用の若い世代に向けた華やかで遊び心のある空間を目指した。特にラウンジには、人が思わずもたれ掛かりたくなるような大きな丸みとボリューム感のある家具を配置した。レンガタイル、アクリル、ファブリックといった異なる素材感や透明感を持った家具を華やかな桜色を基調として構成した。

3: 共有部と専有部の空間のコントラスト
華やかな暖色系の共有部と対をなすように、客室や風呂といった宿泊客だけが利用する専有部は、彩度を抑えた落ち着きのある緑色系の空間でまとめた。互いの空間を行き来すると、補色対比効果によって、それぞれの空間の特徴である”華やかさ”と”落ち着き”が強調される空間となる。

最後に
 二つ以上のモノごとの関係を新たに定義すること。突き詰めると空間設計とはこのことの連続であると思う。ある時は馴染ませながら、また別の時は対比させながら、そこにあるもの同士の関係を韻を踏むように作り上げていくこと。そのことで80年代の空間の魅力を引き出しながら、現代の空間としての心地よさを共存させたホテルを目指した。

用途 : ホテル
所在地 : 埼玉県深谷市
協働設計 : Spicy Architects (山本稜+大澤さな子)
植栽 : SOLSO
照明計画 : TILe
サイン計画 : 三星デザイン
施工 : SurfZion
竣工年 : 2024年
写真 : 長谷川健太(OFP)

Principal use : hotel
Building site : Fukaya-shi, Saitama
Collaboration : Spicy Architects (Ryo Yamamoto+Sanako Oosawa)
Plants : SOLSO
Lighting design : TILe
Sign design : Mitsuboshi Design
Construction : SurfZion
Completion : 2024
Photo : Kenta Hasegawa(OFP)