Saitama Grand Hotel Honjo / 埼玉グランドホテル本庄

hotel / 2023

対比的順応関係 / Contrast Adjustment
二つ以上のモノごとの関係を新たに定義すること。突き詰めると空間設計とはこのことの連続であると思う。80年代のいわゆるバブルの時代に建てられたホテルのリノベーションのデザイン監修と家具の設計を行った。既存の建物の仕上げは、石が貼られ、シャンデリアが吊られ、金色のメッキがされた派手な天井など、80年代という時代背景を反映した設えをしていた。それらは、単体では手間をかけられ個性があるのだが、それらが全て現れると、その個性がぶつかりあい、魅力を打ち消しあっていると感じた。なのでそれらを整えることで、魅力ある個性を引き出すことにした。

基本的な内装仕上げは磨かれている。石も磨かれているし、金属も磨かれている。それらピカピカに磨かれたアイテム同士が喧嘩してる状態を調和するように、床から2100mm以上の壁と天井を全てマットでの吹き付け仕上げとした。ピカピカを引き立てるザラザラ。こうすることで、2つの質が調和した心地よい空間の背景が出来上がった。そこに、古いモノと新たに加えられるモノとの関係を、時には対比的に時には韻を踏むように同調させながら、お互いの関係が魅力的に引き立て合うように、家具や仕上げを決定して行った。具体的には以下となる。

①遠い過去の記憶をレファレンスとする
人が集まるエントランス脇のラウンジは、この土地に残る古墳をモチーフに、土を締め固め円形の台のような低いカウンターを設けた。この土の台を中心にして、囲むようにエントランスのラウンジと外側の植栽が一体となり、内外がひと繋がりとなった庭園の中にいるようなラウンジとした。

②内部と外部をつなげるエレメント
庭石をイメージして、テーブルの脚のウエイトはコンクリートの円柱を砕いて、人工的なモノと自然にある石との中間のような存在を目指した。反対に、室内に出てくる真鍮仕上げの素材を、パンチングメタル加工し、外部灯篭照明のシェードに使うことで、室内のエレガントな設えが外の庭へと連続することを意識した。

③内部と外部の中間の設え
朝食会場は真鍮メッキの派手な天井システムと韻を踏む形で、半円形の真鍮パンチングパーティションが空間を緩やかに仕切る。そのパーティションのウェイトは、ラウンジと同じ円柱を砕いた石のようなコンクリートを使用している。これらの要素がエレガントさとラフさが対比的に重なる内と外の中間のような設えをつくっている。

このように、互いの関係を対比させながら、そこにあるもの同士の関係を韻を踏むように作り上げていくことで、80年代の空間の魅力を引き出しながら、現代の空間としての心地よさを共存させている。

用途 : ホテル
所在地 : 埼玉県本庄市
協働設計 : Spicy Architects (山本稜+大澤さな子)
建築改修設計 : アイダアトリエ
植栽 : SOLSO
照明計画 : TILe
サイン計画 : 三星デザイン
施工 : SurfZion
竣工年 : 2023年
写真 : 長谷川健太(OFP)

Principal use : hotel
Building site : Honjo-shi, Saitama
Collaboration : Spicy Architects (Ryo Yamamoto+Sanako Oosawa)
Architectural renovation design : Aida Atelier
Plants : SOLSO
Lighting design : TILe
Sign design : Mitsuboshi Design
Construction : SurfZion
Completion : 2023
Photo : Kenta Hasegawa(OFP)